今さら聞けない!フレックスタイム制ってどういう働き方?

フレックスタイム制は普及していない?

働き方改革関連法が2019年から順次施行され、時間外労働の上限規制や有給休暇の取得義務化など、労働者個々の事情に応じて、多様な働き方を選択できる社会を目指す動きが広がってきています。

その中でも、フレックスタイム制という言葉を耳にする機会も増えてきているのではないでしょうか。「フレックスタイム制を導入して時間の融通が利くようになった!働きやすくなった!」という声やニュースを聞くこともあります。

ですが、2024年の厚労省の就労条件総合調査によると、フレックスタイム制を導入している企業は、企業全体の7.2%程度であり、広く普及しているとは言えません。特定の業種には不向きな制度であることや、勤務時間がバラバラになることで、組織のコミュニケーションが低下したり、勤怠管理が煩雑化するなどを危惧して、導入していないことが理由として挙げられます。

しかし、自分の企業に導入できる余地があるかどうかは、フレックスタイム制自体を正しく理解していないと判断できません。フレックスタイム制を導入するにしてもしないにしても、従業員の方にも正しく説明できるように、フレックスタイム制について理解を深めていきましょう。

フレックスタイム制って?

フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。


自ら決めることができると聞くと、通常の労働時間制度より、「働く日数や時間」を減らすことができて楽になる?と考える人もいるかもしれません。

ですが、基本的な考え方として、「総労働時間=働かなくてはいけない時間」は通常の勤務の場合と変わらない!ということに留意が必要です。

フレックスタイム制の基本イメージは以下のとおりです。

通常の労働時間制度の場合、当然ながら、勤務時間の全てについて勤務しなければなりません。
しかし、フレックスタイム制の場合、必ず勤務しなければならないのは、コアタイムの時間帯のみとなります。

そして、フレキシブルタイムの時間帯であれば、労働者自身が自由に出社・退社の時間を決めることができます。
子供の保育園の送り迎えや家事の分担、病院に行きたい、予定があって早く帰りたい・遅く出社したいなど、プライベートと仕事のバランスが取りやすくなるメリットがあります。

じゃやっぱり働く時間が減るから楽になるの?となりそうですが、後述しますが、もちろんそんな都合の良い話ではありません。

清算期間や総労働時間を定める必要がある

フレックスタイム制を導入するには、以下の項目を労使協定で定める必要があります。

①対象となる労働者の範囲
 例えば、「全従業員」、「各人ごと」、「企画部職員」などとすることも可能です。導入しやすい部署・グループだけ導入することも制度上は可能です。

②清算期間
 3か月を上限として、清算期間を定めます。1週間でも3か月でも良いですが、賃金計算期間に合わせた1か月とする企業が多いです。清算期間の例は後ほど改めて説明します。

③清算期間における総労働時間
 ②清算期間の間で労働すべき時間を定めます。すなわち、フレックスタイム制では、清算期間を単位として所定労働時間を定めることになります。

④標準となる1日の労働時間
 有給休暇を取得した際に⽀払われる賃⾦の算定基礎となる労働時間の⻑さを定めるものです。

⑤コアタイム ※設けなくても良い
 前述したとおり、必ず働かなければならない時間帯です。

⑥フレキシブルタイム ※設けなくても良い
 前述したとおり、労働者自身が自由に出社・退社の時間を決めることができる時間帯です。導入できる企業は限られると思いますが、例えば、コアタイムを設けず、朝5時から夜22時までを全てフレキシブルタイムにして、フルフレックス制や完全フレックス制と呼ばれるような、その日の就業時間を自由に決めることも可能です。

ここで重要なのは、②清算期間③清算期間における総労働時間です。

イメージしやすいよう所定労働時間を追記したフレックスタイム制の図が以下になります。

例えば、
②清算期間「1か月」
③清算期間における総労働時間「140時間」
と労使協定で定めます。

その場合において、上記の図で、清算期間1か月の間、コアタイムのみしか出勤していなかったとします。
1日のコアタイムは10:00〜12:00の2時間と13:00〜15:00の2時間の計4時間しかありません。
そうすると、1か月の所定労働日が20日間だとしたら、全部の日に出勤しても、
労働時間は4時間×20日の80時間しかありません。

この場合、140時間ー80時間=60時間分を働いていないため、欠勤扱いとなり、給与から控除されます!※説明は割愛しますが次の清算期間で調整することも可能です

つまり、上記の例の場合、ある日はコアタイムの4時間しか勤務しなかったなら、別の日はフレキシブルタイムを利用して10時間勤務するなどして、清算期間の1か月の間での総労働時間が140時間になるように労働者自身で調整することがフレックスタイム制の基本です!

もちろん、逆に150時間働いたということでしたら、上記の例の場合、
150時間−140時間=10時間分の賃金を追加で支払うことが必要です。

フレックスタイム制の導入で助成金がもらえる?

細かい条件はありますが、フレックスタイム制の導入で両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース)という助成金がもらえる可能性があります。

細かい説明は割愛しますが、育児を行う労働者を支援するためにフレックスタイム制を導入して、その制度を利用した場合に、1人当たり20万円(最大5人まで・100万円)の助成金を受給できます!

いかがでしたでしょうか。ざっくりですが、フレックスタイム制の基本を理解することで、「ウチの企業にはやっぱり導入できないな…」とか「こっちの部署には導入できないけど、他の部署なら導入できるかも!」といったイメージができるようになれば幸いです。

大切なのは何でもかんでも制度を導入するのではなく、その企業に合った制度を理解して、自社を良くしていくために取り入れるかどうかを検討することだと思います。

今回は、フレックスタイム制の基本についてのみ説明しましたが、他にも

・清算期間が1か月を超える場合、労使協定を労働基準監督署に届出必要
・清算期間における総労働時間の上限

・清算期間における総労働時間を「1⽇○時間×清算期間中の所定労働⽇数」とする方法
・完全週休2日制の事業場における総労働時間の上限の特例
・清算期間における賃金の計算方法
・時間外労働のカウント方法

など、細かいポイントがありますので、ご興味がある方は、
お問い合わせ・初回ご相談無料ですので、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

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